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『幻想郷妖魅考(仮)』 第一回 多々良小傘

  • 2011/12/17(土) 18:23:51

はい、シリーズでお届けする『幻想郷妖魅考(仮)』です。

東方projectに登場する妖怪キャラの元ネタ概要を纏めていきます。

あくまで勉強中の妖怪好きによる妖怪的視点の一考察であるということをご了承ください。


今回は第一回・多々良小傘についてです。

自分の好きな東方キャラのベスト3に入ります(どうでもいい)。










多々良小傘

名前:多々良小傘
二つ名:愉快な忘れ傘(星蓮船)
    不憫な不法投棄物(ダブルスポイラー)
    お困りの忘れ物(神霊廟)
能力:人間を驚かす程度の能力
種族:からかさお化け
スペルカード:大輪「からかさ後光」
       雨符「雨夜の怪談」
       傘符「大粒の涙雨」
       驚雨「ゲリラ台風」
       虹符「オーバー・ザ・レインボー」
       傘符「細雪の過客」
       虹符「アンブレラサイクロン」
       etc...




①『多々良小傘』

 「多々良」という苗字、地名は実際に存在するが、ここでは妖怪「一本だたら」を紹介したい。
 
 
 「イッポンダタラ」

 「一本だたら。一つだたらともいう。奈良県、和歌山県の県境を東西に連なる果無山脈を中心にした、紀伊半島の山中でいう妖怪。」

 一、「果無山では一本足で目が皿のような妖怪とし、十二月の二〇日だけに出現するので、「果ての二〇日」といって厄日としている。」

 二、「奈良県吉野郡川上村の伯母ヶ峰にも一本だたらがいて、やはり十二月の二〇日に山へ行くとこの妖怪に出くわすとして、その日は絶対に山入りしない。こちらの一本だたらは電信柱に目鼻をつけたような姿で、くるくると宙返りをしながら雪の多い日に一本足の足跡を残すという。」

 三、「堀田吉雄の「伊勢の妖怪」によれば、伯母ヶ峰の一本だたらは人に害を与えないのが特徴だとしている。しかし伯母ヶ峰付近でいう一本だたらとは、猪の霊(猪笹王)が化けた一本足という鬼神のことをいう場合もあり、「果ての二〇日」とはその日に山へ入ると一本足に襲われるからという伝説によるものである。」

 四、「和歌山県西牟婁郡では、ゴーライという河童が山に入るとカシャンボという山童の一種になるといわれ、このカシャンボのことを一つだたらともいっている。一つだたらは一つ目一本足の妖怪で、よく山中で相撲を挑んでくるものという。」

 (以上、村上健司『妖怪事典』より)
 
 
 村上氏は紀伊半島の山中で語られる妖怪は錯綜した関係にあると指摘し、上記に挙げた四種の「イッポンダタラ」は似た特徴を持つ別種の妖怪かもしれないとしている。

 この内の一番や四番の身体的特徴から、多々良という苗字が付けられたのかもしれない。

 一本だたらは製鉄に関わる妖怪であるという見解があるが、詳しく話すと長くなるので概略のみを記す。

 日本古来の製鉄技術を利用する鍛冶師(タタラ師)は火加減を長時間凝視するため片目が潰れ、吹子を踏み続ける片足が萎えてしまうとされた。

 製鉄の神として信仰される天目一箇神(アメノマヒトツノカミ)もまた一つ目であり、この神(そしてそれを信仰していた製鉄技師たちへの畏怖)が零落したのが一本だたらである、という見解である(多田克己『幻想世界の住人たちⅣ 日本編』より)。
 
 しかし、多々良小傘と製鉄を直接繋げるのは少々無理がある。これに関して詳しくは後述(からかさお化け)を見ていただきたい。
 
 
 

②『からかさお化け』

 多々良小傘はからかさお化けである。妖怪・お化けと聞いて一般的にまず思い起こされる存在の代表例であり、実にポピュラーな妖怪である。傘化け・からかさ小僧などの異称もある。
 
 
 「カラカサオバケ」

 「傘お化け。一つ目あるいは二つの目がついた傘から日本の腕が伸び、一本足でピョンピョン跳び回る傘の化け物とされる。」

 (以上、村上健司『妖怪事典』より)
 
 
 阿部主計『妖怪学入門』には「からかさの一本足」として、その姿がより詳しく書かれている。
 
 
 「傘をすぼめた形に、柄のかわりに人間の足一本がにょっきりと、高下駄をはいてぴょんぴょんと跳びまわる。一つ目と、赤い舌を出し、両横から左右の手を出して、片手に日の丸の扇を開いて踊り廻る。脚の上の方がどうなって、傘の内部へどうつながっているのか、この傘はけっして開かないから判らない。」

 (阿部主計『妖怪学入門』より)
 
 
 ちなみにこの本で、阿部主計はこの妖怪を「いろんな静物のおばけがあった中で、なぜこんなの一つが残ったろう。あまりてぎわのいい意匠のしろものとは思えない」と手厳しく評価している。
 
 しかしこの妖怪、有名な割には伝承らしいものが存在せず、戯画などの絵画に描かれたお化けであるという。つまりこの妖怪は、豆腐小僧(豆腐を持つ小僧の妖怪)や滑稽達磨(手足の生えた達磨の妖怪)と同じ「画像から誕生した妖怪」だと考えられる。

 本来妖怪には姿は存在しない。人々が経験した様々な出来事が口伝えなどによって広まっていくのが妖怪の原型である。しかし段々と「絵画に表す」という手段が一般化し、多くの妖怪に型が与えられていった。そして最後には、絵描きが先達の伝統や画風を引き継いだ、オリジナルの妖怪を描き出すようになる。これが「画像から誕生した妖怪」だ。

 妖怪の画像化の多くは最終的に『笑い』を伴うようになる。恐ろしい存在だった鬼・天狗・河童・狐狸もキャラクター化され、馬鹿馬鹿しくて滑稽な存在となる。過去の伝承を色濃く受け継ぐ妖怪たちがこうなるのだから、画像から誕生する妖怪たちが恐ろしくなれる余地はない。
 
 もちろんからかさお化けにも(間接的ながら)受け継いだ伝統がある。前述した「一本だたら」のような、一目一本足の怪異である。「一目」や「片足」といった身体障害は古来神に類する存在の証拠とされ、山人や一本だたらといった零落した妖怪の特徴となった。これがさらに民間に広まった結果、一つ目小僧やからかさお化けとなっていった。

 しかし一つ目小僧はちゃんとした伝承などが確認されているので、順序としては、
 
 
 一目片足に対する畏怖・信仰→山人、一本だたら(恐怖の対象としての妖怪)→一つ目小僧(キャラクターの側面も持つ妖怪)→からかさお化け(キャラクターとしての妖怪、お化け)
 
 
 なのかもしれない(これは自分の憶測なので、特に一つ目小僧とからかさお化けの関係性は要調査である)。
 
 
 

③容姿

 見ての通り、小傘は左右の目の色が異なる(右目が青・左目が赤)。いわゆるオッドアイ(虹彩異色症)と呼ばれる形質であり、近年のキャラクターには比較的多い、人気の属性である。

 これだけ見れば単なる個性だが、小傘の全体的なカラーリングが青系統であること、持っている傘の目も赤いということを考えると、左目の赤い目は「一つ目」を表現しているのかもしれない。

 傘は典型的な「からかさお化け」の形をしている。傘布の色は紫で、特徴的な石突の部分も相まって茄子のように見える。傘布には赤い目玉と長い舌がくっついていて、手元の部分は足袋と下駄に似た形をしている。
 
 
 

④風雨と一つ目

 小傘のスペルカードには気候、特に雨や風にまつわる名前のものが多い。傘としての性質を考えれば当然のことだが、ここでは一つ示しておきたい例がある。『一目連』という妖怪(?)だ。
 
 
 『イチモクレン』

 『一目連。三重県桑名でいう暴風の神。多度神社の摂社として祀られ、一目龍社または多度権現とよばれている。暴風神、雷雨神としての性質から、その出現時に激烈なる暴風雨をともなうと、人々から恐れられていた。』

 (以上、村上健司『妖怪事典』より)
 
 
 一目連は神として祀られていながら妖怪的な一面を残している。江戸時代の古書にもその名は度々記されていた。

 『笈埃随書』によると、一目龍社は扉がなく、簾がかかっているだけの社であり、一目連が外出する時には大雨が降り、雷も鳴り響くという。

 一目連はその名の通り片目の龍の姿をしているという。さらに公式HPによると、『別宮 一目連神社』の祭神は前述した天目一箇命(あめのまひとつのみこと)であり、十一月八日には「ふいご祭り」というのも行われるという。




⑤『愉快な忘れ傘』

 忘れ傘といえば、京都東山の寺院・知恩院の七不思議の一つ『知恩院の忘れ傘』を思い出す。知恩院の御影堂の軒裏に置かれた傘は、長い年月ですでに骨だけとなってしまっている。

 公式HPによると、「名工・左甚五郎が火災よけのためにわざと忘れていった」という説と、「御影堂を建立するとき、このあたりに住んでいた白狐が、自分の棲居がなくなるので新しい棲居をつくってほしいと依頼し、それが出来たお礼にこの傘を置いて知恩院を守ることを約束した」という説があるという。白狐は現れるときには童子の姿となっていたともいわれている。

 左甚五郎も怪異伝承が広く残されている人物であり、どちらの説にせよ妖怪的な話である。
 
 ちなみに、火災よけと傘といえば、鳥山石燕『百器徒然袋 上』には「骨傘(ほねからかさ)」という妖怪が描かれている。これは石燕創作の妖怪であるとされている。

 
 骨傘

 『骨傘』

 『北海に鴟吻と言へる魚あり かしらは龍のごとく からだは魚に似て 雲をおこし雨をふらすと このからかさも雨のゑんによりてかかる形をあらはせしにやと 夢のうちにおもひぬ』

 (以上、高田衛監修『鳥山石燕 画図百鬼夜行』より)
 
 
 鴟吻とは鴟尾、鯱のことであり、日本ではしゃちほことして有名である。名古屋城など、建築物に鯱の装飾を施すのは火災よけの意味があるとされている。石燕は鯱と雨傘を組み合わせた、新しい妖怪を描き出したのである。
 
 
 

⑥最後に

 多々良小傘はその二つ名の通り、愉快な妖怪である。人間を驚かせようと創意工夫を重ねるが、それらは殆ど失敗に終わり、時代遅れと馬鹿にされる。本人(本妖?)にとっては嬉しくない現状だが、そのあり方こそが、実は妖怪の到達点の一つなのである。

 江戸時代に流行した草双紙や黄表紙のお化けたちは、人間を脅かそうと様々な方法を用いるが、その結果は失敗続きであり、その情けない姿は読者の笑いを誘う。かつては人々を恐れさせた怪異も、キャラクター化してしまってはその恐怖はもはや感じられない。

 そんな中、いつの間にか妖怪の仲間入りをしていたからかさお化けは、いかに過去の伝承を引きずっていても、もはや恐怖の存在としては扱われない。古臭い化け物たちと一緒に箱根の先に追いやられてしまうのだ。

 そんな己の出自を知ってか知らずか、小傘は人間を脅かし続ける。だがその姿は微笑ましく憎めないものでこそあれど、虚しくは感じられない。
 
 多々良小傘とは、妖怪が到達した『キャラクター』というあり方を見事に現代風に表現した存在なのかもしれない。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
後書き

ここまでお読み頂き、誠にありがとうございます。

最初に書きましたように、この纏めは勉強中の妖怪好きが纏めた東方キャラの一考察であり、色々と間違っている所があるかもしれませんので、ご了承ください。

今後もこういった形で纏めていこうと思っておりますが、もしも「新たな資料を見つけた」とか、「ここは間違っているのではないか」といったご意見がありましたら、教えてくださると嬉しいです。

前回の多々良入道からの多々良小傘ですが、元々東方キャラ妖怪まとめをやりたいと思っていたので、いいきっかけになったかもしれんと思っております(まあ既出かもしれませんが・・・)。

小傘は実にいい味を出しているキャラです。ストーリーに直接関わることはなく、幻想郷をふらふらと彷徨いつつも、墓場に現れては妖怪家業に精を出す。それでいて直接的な被害を与えない所もまた、『妖怪』というより『お化け』らしい。

小傘は他の妖怪キャラに比べ、『お化け』と呼ぶにふさわしい成分が強いです。そこが、自分が好きな理由なのかもしれません。

からかさお化けといって自分が真っ先に思い出すのは、東京の浅草は仲見世通りに売っている『お化け傘』です。

お化け傘1

お化け傘2

知る人ぞ知るこの妖怪グッズは、からかさお化けを見事に立体化した一品であり、実際に広げたりすることも可能です。

一つ目顔の裏には、有名な妖怪の絵も描かれたりしています(版権的にまずい面々もいるのはご愛嬌)。

安価で入手できるこの『お化け傘』、浅草観光のお土産にいかがでしょうか?

それからもう一つ、歌舞伎には『闇梅百物語』という演目があり、からかさお化けが活躍するお化けの歌舞伎として知られています。からかさお化けを演じる役者は、一本歯の高下駄で片足立ちになるという、高度な技術を必要とされるとか・・・。

最後は東方とは関係ない話になってしまいましたな。

さて、次回は『ミスティア・ローレライ』を予定しています。お楽しみに。

それでは。





参考文献

『妖怪事典』村上健司 毎日新聞社
『幻想世界の住人たちⅣ 日本編』多田克己 新紀元社
『妖怪学入門』阿部主計 雄山閣出版
『鳥山石燕 画図百鬼夜行』高田衛監修 国書刊行会
知恩院 公式HP:http://www.chion-in.or.jp/chion-in/index.php
多度大社 公式HP:http://www.tadotaisya.or.jp/index.html

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