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「多々良入道」の概要

  • 2011/12/12(月) 00:57:05

今回は「多々良入道」という化け物についてです。
名前から「一本ダタラ」に似た化け物かと思われる方も少なくないと思いますが、鍛冶に関わるという以外は、恐らく関連性は無いかと思います。





自分がこの化け物を最初に確認したのは、『鉄の社会史(斎藤潔 雄山閣BOOKS)という書籍です。
去年、大学図書館の廃棄本から発見し、「製鉄なら一本ダタラとかの記述があるかも・・・」という希望的観測から入手したものでした。
そして積み本の山に紛れていた本書を何気なく読み進めると、次のような記述がありました。


「(前略)しかしどういうものか、「多々良入道」という化け物がいて、「鉄を千夜吹けば、この化け物が出てきて、鉄山の人を喰ってしまう」といわれていた。(第一章・たたら製鉄技術の改良 一、野だたらから高殿式たたらへ 経営者の交代)」


突然出てきたこの名前に、自分は一瞬「これは一本ダタラ系の呼び名の一つか?」と考えたのですが、どうもそうではないらしい。
そこで、取り敢えずgoogle検索にかけてみたところ、とあるサイトに少しだけ「タタラ入道」に関する記述があり、どうやら『鉄山必要記事』という本が出典元らしいとわかりました。

『鉄山必要記事』とは、下原重仲(1738~1821)という鉱山師が天明四年(1784)に「古来のたたら製鉄から江戸時代の製鉄法にいたる技術,伝承,経営などの記録」を纏めた書籍だそうです。別名『鉄山秘書』。
これに多々良入道が載っているらしいということで、図書館から『日本科学古典全書5 採鑛冶金Ⅱ』を探し出しました。
(この他にも『現代語訳 鉄山必要記事』が出版されています。こちらのほうがお手軽です)

以下に原文を記します(出典『日本科学古典全書5 採鑛冶金Ⅱ』原文ママ)。



多々良入道ト云事

鐵(カネ)ヲ千夜吹ケハ、蹈鞴(タタラ)入道ト云妖(バケ)物出来テ、鐵山ノ人ヲ殺害スト云事、往古ヨリ云習ハシタル事ナリ。
鐵ヲ千夜吹續シ高殿(タヽラ)ヲハ、又新ニ打直シ、床ヲモ鐵吹也。
於鐵山ニハ幼童(コトモ)ノ怖ニハ、必此化物之事ヲ云出シテ、令恐怖也。
其云習シニハ高殿ノ上ニ跨リテ、火宇内(ホウチ)ヨリ大ナル手ヲ指下シテ内ヲカキサガスト、人アレバツカミサキ喰フト、如何ナル妖物哉ラム不知之。
高殿ヲ打直ス事ハ、今モ云ナラハシタル如、新ニ打直スナリ。
往古ハ木モ澤山ニア〔リ〕シヤラン、鐵千夜吹シ鑪ノアトトテ、是彼ニ古キ床アリ、近キ頃ハ日野郡俣野村ノ内深山口ト云所ニ、予カ祖父正國ト云シ者、多々良千貳百七十二夜吹シナリ、予カ六、七歳ノコロナリシ四十ヶ年已前ノ事也。
此近年鐵山ニハ五百夜ト吹續シ所未聞、是全ク鐵山ノ末世に成リテ往古ニ違ヒシ故如此。



難しい事が書いてありますが、要するに・・・

「たたら場を千夜動かし続けると、蹈鞴入道(多々良入道)という化け物が現れて、鉄山の人を殺すという」
「鉄山の子供を怖がらせる時には、必ずこの化け物の話をした」
「多々良入道は高殿の上に跨って、大きな手で中を探り、人を掴み上げて裂き喰らうという」

といったことが書かれています。



文中に度々登場する「千夜」について、『鉄の社会史』ではこのように解説しています。


「夜(または代)といのは、たたら炉の一操業(三~四昼夜)をいうが、普通には一年に五〇~六〇夜操業するから、千夜といえば約二〇年かかることであり、実際にはそんなに長く操業していると、原料の砂鉄や木炭が近辺で入手できなくなり、移転しなければならなかったようだ。」


このことから、多々良入道は定位置で長い間鍛冶を行い続けることを戒める意味を持つ化け物である、と予想できます。
さらに、子供のしつけなどにも利用されていたようです。

しかし先ほどの『鉄山必要記事』には・・・

「私(筆者)が六・七歳の頃には、私の祖父は千二百七十二夜も(鉄を)吹いていたが、最近は五百夜吹き続ける所も聞かない。全く鉄山の末世である」

といったことが書かれているのが気になる所ではあります。










以上が自分の調べた「多々良入道」についての概要です。これら以外にも何らかの記述があるかもしれませんので、新たな情報がありましたら教えていただきたいです。

あまり知られていない(妖怪好きの間でも)この化け物を発掘できたのは、全く幸運だったと言わざるを得ないと思います。
こういった発見がまたあれば、このブログにて紹介していきますので、お楽しみに!(めったに無いことだとは思いますが・・・)
ではでは、今回はここまでです。

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